Raindrop
普段の素行は決して良くはないし、夜になると繁華街でそっち系のお兄さんたちと夜な夜な喧嘩を繰り広げているという噂もある彼だけれど。

クラシックらしからぬ面白い音を奏でる彼は、実に興味深い人物だった。

「君も練習かい?」

自然に並んで歩き始める響也を横目に見る。

「ああ、面倒くせぇけどコンクール近いしなぁ。一回くらい出とかないと親父がうるせぇし……あれ、お前練習室予約してたっけ?」

「いや。僕は屋上」

「……雨降ってんぞ?」

廊下から窓の外を見やれば、しとしとと雨が降り出していた。

「降る前に引き上げてきたんだよ」

「ふーん? てか、なんで屋上?」

「レッスンまでの暇つぶし」

「……なら、屋上じゃなくて家に帰れば? 家からのが教室まで近かったよな。それにお前んち、練習室あんだろ?」

「僕は外で弾くのが好きなのさ」

……なんて、ね。

本当は、家では弾きたくないんだ。

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