Raindrop
「何よ~、お仕事はちゃんとやるわよぉ~、ねぇ花音ちゃん?」

「え、えっと……」

花音は困ったように拓斗の影に隠れる。

「見ろ、花音様もお困りだ! ……拓斗様、申し訳ございません、躾が行き届いておりませんで……。お叱りは私が受けますので、ビシッと仰ってください。ビシッと……てめぇふざけんなよ、しゃきっとしろやこの野郎! ……と」

そう言う東城の顔が、何故か輝いている。まるで叱ってくれと言わんばかりに。

「いや、あの……」

拓斗も困り顔で僕をちらりと見る。

そんな僕も、たぶん拓斗と同じように困った顔をしている。

それを見た西坂が、つかつかと東城と南原に歩み寄り、2人の頭に拳骨を落とした。

ぼこっと。

骨が陥没したのではないかという音が聞こえた。

「申し訳ございません。このように個性的な者たちではありますが、的確に仕事はこなしますし、我々、截拳道(ジークンドー)も嗜んでおります。ボディガードとしても役立ちますので、どうかご安心を」

恭しく頭を下げる西坂の後ろで、拳骨を落とされた2人が泡を吹いて倒れた。

……本当に大丈夫だろうか。

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