Raindrop
花音たちと別れて、僕たちの控え室へと行こうとしたそのとき。

廊下の向こう側から集団が現れた。

コンクール、しかも予選だというのに、ソロの演奏会でもするのかという華やかな衣装をまとった集団の先頭にいるのは、花音を苛めた首謀者である浅葱姉妹だ。

その周りを取り囲んでいる少年、少女たちが直接手を下した者たちであろうけれど。

「あら、花音さんじゃありませんか」

花音のクラスメイトである浅葱莉子が、一歩前に出て微笑んだ。

「コンクールは棄権なさると聞いたのだけれど……出場なさるのかしら。それとも、お兄様方の応援ですの?」

浅葱莉子の後ろで、クラスメイトや同学年の子たちがくすくすと笑っている。

少し離れた場所からそれを聞いていた拓斗が前に出ようとするので、腕を横に出し、それを止めた。

「兄さん……」

目を吊り上げて僕を見上げる拓斗に、動かないように目で制する。

花音は、五所川原をぎゅっと抱きしめ……浅葱莉子を見ている。

目を逸らさずに、じっと、耐えている。

……戦う気だ。

これは花音自身が乗り越えないといけない壁。

僕たちは見守らなければ。

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