Raindrop
肩を大きく上下させながら、息をたくさん吸い込んで。

「勘違いじゃ、ないもんっ……ちゃんと頑張ったんだもんっ。莉子ちゃんにも……負けないもんっ!」

五所川原をぎゅっと抱きしめながら、花音は声を張り上げた。

──良く言った。

臆病で泣き虫な花音にしてみれば、上出来だ。

花音の大声が珍しいのか、浅葱莉子は少し怯んだ様子。そこへ、姉である浅葱亜子が口を挟んできた。

「そんな勘違いをしているから、妹はわざわざ指摘してあげているのに。嫌だわ、ちゃんと教育のなっていない子って」

そして僕へ視線を向けながら、腕組みをしてこちらへ歩いてくる。

「妹さんの勘違いで、家の者や学校にまでおかしな訴えをなさったそうね。迷惑ですわ。証拠もないのに犯罪者扱いはやめてくださる?」

高圧的な視線を送ってくる浅葱亜子に、僕はふふっと軽く笑ってあげた。

「証拠なら、ありますよ? 証言者もたくさんいますしね」

「……なんですって?」

「貴女の周りの方は、あまり信用に足る方々ではないようですね。気をつけた方がよろしいですよ。まあ……周りの人間に恵まれないのは、貴女本人のせいなのでしょうけれどね」

微笑んで忠告をしてあげると、浅葱亜子はカッと頬を染めて僕を睨みつけた。

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