Raindrop
拓斗に礼を言ってから花音を見る。

浅葱姉妹が去って落ち着いたかと思ったけれど……上下する肩は更に激しくなっていた。

五所川原を強く抱きしめながら、がくりと膝を崩す。よほど緊張が激しかったのか、過呼吸になりかけている。

「花音」

はっとして駆け寄ろうとすると、その前に南原が膝を折り、花音の口を白い手袋をした手で覆った。

「花音ちゃん、大丈夫よ、屈まないで、背筋を伸ばして」

後ろから抱えるようにして、座り込んだ花音の背筋を真っ直ぐにした南原は、静かな声で指示を出す。

「少しずつ、ゆっくり息を吐き出して。少しずつよ。そう……もう吐けないってところまでね。……うん、そうしたら、今度はゆっくり息を吸って。もう吸えないってくらいよ。ゆっくり……そう」

苦しそうに眉を寄せながら、花音は南原の声に従い、ゆっくりと呼吸を繰り返す。

「大丈夫、花音? もう、無理しなくていいよ」

花音の前に屈んだ拓斗は、心配そうに声をかける。

しかし花音は首を振った。

「がんばる、もっ……負けないんだ、もっ……」

「はいはい、分かった分かった。苦しいうちは喋らないで、ゆっくり息をして」

南原に窘められながら、花音はまたゆっくりと深呼吸。

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