Raindrop
しばらくして花音の状態も落ち着いて、みんなほっと胸を撫で下ろす。

「ありがとう南原、助かったよ」

「どういたしまして。主人を護るのが執事の務めですから」

にこりと微笑んだ南原は、花音を抱きかかえたまま彼女の頭を撫でる。

「それにしてもよくやったわ花音ちゃん。それでこそアタシのご主人様よ。惚れ直しちゃうわぁ~」

うふふ、と笑う南原を、胡乱な目で見る拓斗。

そんな拓斗を見て、くすくすと笑う水琴さん。

僕はそんな2人を見て苦笑し、花音の前に跪いた。

「……ごめん、少し無理をさせたね」

花音が乗り越えなければいけないことだとしても、あまりにも負担が大きかった。ひとりで頑張らせてしまったことを少しだけ後悔する。

「ううん、お兄ちゃん」

花音は首を振る。

「お兄ちゃんの作ってくれた五所川原くんが一緒にいてくれたから、頑張れたよ」

お守りにあげた小さなウサギのぬいぐるみを抱きしめながら、花音は僕を見上げ、小さく微笑んだ。





ひとつの山は、越えられただろうか。

あの姉妹に限らず、嫌がらせをしてくる者たちはいるかもしれないけれど。

僕たちはそれをひとつずつ乗り越えていくしかないんだ。

変えられない名前がある限り。



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