世界をかける少女
「あっ来た!菜子おはよー」
「おはよう茜」
教室に入ると、きっと昨日の課題をしていたんだろう。
シャープペンを持った手を振る茜。
そのまわりには、いつも朝早いクラスメート達がいつもどおり話していた。
「菜子今日早くない?」
「うん早い」
「あっ北野見るためでしょー」
「違うから」
茜の言葉に苦笑した。
実は、図星だったりするんだ。
いつも登校中に見かけるのは、北野の後ろ姿で。
クラスが違うから、早く来ないと北野を見られない。
見るだけで話しかけることもできない私は、相当チキンだ。
「北野来たよ菜子」
ぼそりと呟いた茜の言葉に、体が反応した。廊下側の窓からは、エナメルバッグを背負った北野が歩いているのが見える。
ドキドキしながら横目で北野を追っていると、不意に教室に目を向けた北野と目が合った。気がした。
パッと反らした視線。
反らしたのはもちろん私。
やっぱり、何もできないんだ。