デュッセルドルフの針金師たち前編
しかし修理に3週間で300ドルはかかるということだった。
「2,3日待ってくれ。コペンの友人と相談して修理するか
廃車するかきめるから。必ず連絡する」

(ベック=捨てるという意味かよく使う)
ベラホイのユースにいる、と言伝してコペンへ向かった。
ヒッチでベラホイへ。

ユースに着くと真っ先に掲示板を見た。あった!
「青タオルへ、職見つかる連絡されたし東京館へ。マメタン」

あのコペンで有名な日本人レストラン
東京館で働けるようになったみたいだ。
早速電話してその晩中央駅で会った。

事情を話したところマメタンは、
「私は大丈夫だからこれ使いなよ」
と言って、300ドル。

まっさらのトラベラーズチェックにサインしてくれた。
全部10ドル札だったから30枚を
駅の銀行でサインしてくれた。

欧州まで来てまだ何もしていないのに、
さあこれからだという時に、
日本の女の子に世話になるとは情けない。

それでもありがたく300ドルを借りて
車を修理することにした。

翌日ユースで仕事ありませんかとたずねてみた。
幸い日本人が二人ほど働いていて、
もしここで働けたらユースで泊まれて一番良い。

はたして、もう一人の日本人がちょうど帰国していて
3週間の空きがあるとのこと。車の修理もそのくらいかかる。
グッドタイミング!ベラホイのユースで初めてのバイトが決まった。

とにかく一文無しでいきなり300ドルの借金。
前途多難な旅の幕開けにもわずかな光明が見えてきた。

デンマークは人口500万人の小さな国だ。
アンデルセンとフリーセックスで有名だ。
酪農豊かな高福祉国でもある。

税金がべらぼうに高くバイトでも半分は持っていかれる。
それでもなごやか子ども連れで週末ノーカットの
成人映画を楽しく見に行くような町だ。

さあこれから3週間、まじめに働こう。
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