デュッセルドルフの針金師たち前編
と思いきや。アウグスブルグを過ぎてミュンヘンまで
あと20キロというところで、曇天の夕方、

緩やかな右カーブの下り坂、ゴトゴトという音と共に、
いきなり車体が大きく傾き右手に火花が見えた。

グリーンベルトにぶつかる寸前に急ハンドル、
車体は左に傾いて横転。オサムは助手席のおじさんの下敷きになった。
待つこと1,2秒。”俺は死んじまっただ”の歌が聞こえる。

とにかく一呼吸おいて、・・・助かったみたいだ。
「重いよ、おじさん外に出て!」

やっとの思いで上向きになった助手席のドアを開けて、
外ににじり出てみてびっくり。車はうまく路肩に横転。
向こうの方から男の人がタイヤを1本ころころと押してくる。

なんと右後部車輪がはずれ、車軸が路面とこすれて
火花を飛ばし、横転したらしい。

ドイツの人々は事故のときにすこぶる手際が良い。
発炎筒、事故表示板、パトカー連絡と速やかに
みんなしてさっさと処理をする。

このときもVWポルシェのハイウェイパトカーがすぐに来て、
皆でわっしょいわっしょいと車を起こしてくれた。
ど派手なヤーパンポップワーゲンでツーリストナンバーだ。

ハンドルが少しゆがみこの胸は痛むが何とか車は動きそうだ。
次のインター出口から修理工場までパトカーが先導してくれた。
ダンケ、ダンケ、フィーレンダンク(おおきに、おおきに)

ドイツの皆様方にあちこちでお礼を言いながら、
シュタルクヤパーナー(強き日本人)と胸を張り、
痛みを抑えて車を運転し続けた。
< 17 / 64 >

この作品をシェア

pagetop