デュッセルドルフの針金師たち前編
第5章北欧その2

デュッセルのホモおじさん

ついに春が来た。ドイツ語も語彙は少ないのに
なれなのかミョウに板についてきた。
中華料理はもうプロ並みだ。

一段とたくましくなったようだ。金もたまった。
自信満々、早くコペンに戻って300ドル返そう。
全てはそれからだ。

ミュンヘンのユースに『バイとあります』と
張り紙を出したらすぐに後釜は決まった。
あの助平なシェフともお別れだ。

別れ際にシェフが耳元でささやいた。
「パスポートを300ドルで売ってくれないか?」
「ナイン、イッヒカンニヒト」(あきまへん)

さいならシェフ。色魔しかまバイバイ!

再び青タオルを首にかけ寝袋をバックに
ヒッチハイクの再スタートだ。

何台か乗り継いで、
フランクフルトからデュッセルドルフへ、
ラストは高級ベンツのおじさんだ。

上品な感じ、60代か?お金持ちそう。
ドイツ語と英語を織り交ぜて、
最初の会話はいつも決まっている。

どっから来た?どのくらいいる?どこへ行く?
学生か?何してる?日本はどんな国か?
ドイツは好きか?生活はどうしてる?等等。

もう英語でもドイツ語でもペラペラだ。

ところがこのおじさん、運転しながら
オサムの膝をぽんぽんと叩く。
それがだんだんとさすりだす。

ちょっとおじさん止めてよ、と言うと、
すっと手を引っ込める。何か変だ。

デュッセルに着いた。オーバーカッセルの
ユーゲントヘルベルゲ(ユースホステル)、
ライン川沿いの橋向こうのユース。

以降このユースが拠点となるのだが。
おじさんもこの近くらしい。
面白いテレビがあるから是非見ていけと言う。

もし力ずくになったら勝てそうだから、
との思いでついて行くことにした。
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