デュッセルドルフの針金師たち前編
「それ、ハッシシ」

「うそ」
「ほんと」

「これは壁土粘土でハッシシじゃないわ」
「すこしかおりがするよ」

「うそよこれ」

彼女は今までのあどけなさは消えうせて突然むきになって怒り出した。
「絶対これは偽物よ。あなたはだまされたのよ」

日本人的な繊細さはどこへやら、半分ハーフのアラブのかたくなさが
むき出しになってすっかりしらけてしまった。

「ああそうかそうか。俺はだまされたんだ。こんなの吸い過ぎて体を
壊さなくてよかった。君のおかげだありがとう。さあ仕事だ帰ろうか」
オサムはなんだかほっとして彼女をユースへ送った。

その夜はもう何も考えずにぐっすりと眠った。
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