デュッセルドルフの針金師たち前編
そうした11月中旬のある日、マメタンはついにダウンした。

げっそりとやせている。もういやと言ってわんわんと泣き出した。
オサムは仕事の手を休め、マメタンを抱きかかえるようにして
外に出た。ユースの前にラインが流れている。大きくカーブして

オーバーカッセルの橋がかかっている。流れはゆったりだ。
向こうにアルトの灯が見える。その日はもう出すのを止めにした。
寒い中日が暮れてすばらしいラインのたそがれ。ベンチに腰かけ

オサムの膝にうずくまってマメタンはおいおいと泣いた。マメタン
はこの時過労とストレスから10kgもやせていたのだ。

次の日、ユースを出ることにした。アルトの近くでホテルを借りた。
一泊50マルクでちょっと高いけれどゆっくり休めるだろう。
とにかくクリスマスまで頑張るしかない。もう在庫はダンボール

5箱分はたまった。全部売り切って旅に出よう!よく考えたら
マメタンは北欧以外旅らしい旅は何一つしていないのだ。
まかせとけ。イスタンブールからギリシャ。スイスで1ヶ月

スキーをしてスペインでさらに一ヶ月休暇。大名旅行をさせてやる。
とにかくがんばろうクリスマスまで。

マメタンはすぐに回復した。さあクリスマスまであと一ヶ月。
金都の夫婦は益々その製作と販売とに執念がこもってきた。
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