デュッセルドルフの針金師たち前編
第7章デュッセルの針金師たち

デュッセルの針金師たち

冬のアルトは日暮れが早い。場所取りは日暮れから始まる。
12月にはいると夕方4時半ごろから場所取りだ。あまり早
く行ってもまるで雰囲気が合わず。すぐポリスに通報される。

日が暮れて雰囲気ががらっと変わりどの店も忙しくなりかかる
直前がベストなのだ。一番角は常連のドイツ人3人のうちの一人
が必ず取る。両脇にイタリアンヒッピーとフレンチヒッピーが

定番なのだが、時々誰もいないことがある。縁日や石松がそれに
並び、あと入れ代わり立ち代りオランダやイタリア系フレンチや
アラブ系等全部で十数軒が並ぶ。金都の夫婦も顔なじみになって

きてすこしずつ一番角に近づいてきた。常連のドイツ人たちは古
くからのヒッピーらしく、マリファナ狂で作品も今ひとつだ。
なんどもつかまってはすぐに戻ってくる。ここは自国なのだ。

イタリア人は何人かいたが作品も販売パフォーマンスもとにかく派
手だ。可愛い子が来ると商売よりナンパが優先らしく、さっさと店
をたたんでディスコへ行くようだ。かなりいい加減で常連はいない。

キプロスという好青年がいて、彼はすぐいなくなったが、実にすば
らしい作品を作っていた。後日彼の作品のひとつをさらに改良して
超ヒットのベストセラー”太陽”が誕生する。

さて問題なのは、アラブとイスラエル。とにかくいつももめていた。
それがこうじてクリスマスの夜に大乱闘事件がアルトで起こるのだ。
これは新聞にもでかでかと載った。

デュッセルドルフの針金師は少しずつだが着実に増えてきて、
その国際色の豊かさと作品群のすばらしさとで
アルトの名物になってきた。
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