サヨナラと言いたかった
「あの子、怒って帰っちゃったみたいね。」



女性が、こうちゃんに話しかける。

こうちゃんは深いため息を吐いて
小さく頷いた。


「お前に言われた通りに、札幌を離れるって言ったよ。」


「そう…。

きっとショックを受けたでしょうね…。」



そう言って、こうちゃんの肩に手を置いたその横顔。




絶対に忘れられない横顔。












―――――こうちゃんの、奥さん。




気がつくと私は、その場から逃げ出していた。




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