サヨナラと言いたかった
沈黙が流れた。


沈黙の間、電話の向こうで、
こうちゃんがどんな顔をしているのか想像してみた。

私が他の人と結婚したことを知って
どんな想いを抱いているのだろう。

記憶の中に残るこうちゃんの顔は、
あまりにもあいまいで
目も、口も、鼻も、頬もぼんやりとしていた。

でも、仕方ない。
あれから5年の月日が流れたのだから。


「ユイ、結婚したんだ。おめでとう。」


「ありがとう。

いろいろあったけど、今は落ち着いて暮らしてるよ。」

< 15 / 117 >

この作品をシェア

pagetop