サヨナラと言いたかった

「出会い」

こうちゃんと私が出会ったのは、私が大学２年生の頃。


１９９８年、５月。
春に大学を卒業したばかりの原田先輩から、突然電話が来た。

原田先輩とはゼミが同じで、先輩はゼミ仲間の中で唯一の女子だった私をいつも気づかってくれていた。


『並木、どうせ暇だろ？
初給料が入ったからおごってやる。
今すぐ来い！絶対来い！』


そんな原田先輩の強引な誘いを断りきれず
私は仕方なくお店へ向かった。


店に着くと、先輩の隣にはなぜかスーツ姿の知らない男の人が座っていた。


「おっ！並木。こっちこっち。

こちらは、俺の上司の川島光輝さん。」


「どうも初めまして。

並木結衣です。」


初めて間近でこうちゃんを見たとき、
とても不思議な気持ちになった。

そして、それはこうちゃんも全く同じで、
初対面の私に対しての最初の一言はこんな言葉だった。


「あの…前にどこかでお会いしてませんか？」