サヨナラと言いたかった
もちろん私には、その相手が誰なのか予想はついていた。


私のことを無言電話で嫌がらせをするほど憎む理由がある人は、あの人しかいない。



―――こうちゃんの奥さん。



付き合い始めてから2年数ヶ月。
『奥さんに関係がバレたら…』
ということはいつも頭の片隅にあった。
対処法もきちんと考えているつもりでいた。

でも、現実に奥さんという存在が私に近付いてきたとき私は何もできなかった。

無言電話がかかってくる時間帯は
いつも午前9時から午後4時。
その間は、家の電話線を抜くことにした。


逃げることしかできない自分が
情けなかった。

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