サヨナラと言いたかった
ずっと心に留めていた不安や恐怖を私はすべて吐き出した。


「ずっと、ずっと怖かった。
なんで何にも言ってこないの?
どうして、闘ってくれないの?



奥さんが泣いて、叫んで
『返して!』って言ってくれてたら、


私・・・こうちゃんのこと諦めてたかもしれない。」


原田先輩は、電話の向こうでずっと黙っていた。


たぶん、私があまりにも興奮していたから
かける言葉が見つからなかったんだと思う。


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