サヨナラと言いたかった

「別離」

夢のようなプロポーズから1ヶ月が過ぎ、私たちは結婚へ向けて具体的に動き出した。


私は実家の母に
『結婚したい人がいる』
ことを報告した。


母は、相手がどんな男なのかも聞かず、
「良かったね、おめでとう。」
とだけ言ってくれた。


私の両親は私が中学生の頃に離婚している。

母は3年前に、子連れの男性と再婚をし、
父はどこで暮らしているのかさえ、
もうわからなくなってしまった。


母の再婚を知らされたのは、私が大学に進学のために家を出た翌日のことだった。


私はその知らせを受けたとき、


「もう私には家族はいない。
帰る場所もなくなった…」


と自分に言い聞かせた。


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