サヨナラと言いたかった
私はこれまでに私とこうちゃんの間に起こった出来事をすべてみちるに話した。


初めて会ったときのこと。

お互いの気持ちを確かめ合ったときのこと。


奥さんのこと。

結婚を約束したこと。


そして、

離れ離れになってしまったこと。


みちるは、ときどき大きく頷いたり、ため息をついたりしながら真剣に私の話を聞いてくれた。


私がこうちゃんのアパートを最後に訪れた日の話をしたときには、みちるの目からは涙がぼろぼろと流れていた。



でも、私は不思議と涙が出なかった。


別れてから今日まで一日だって泣かない夜はなかったのに
なぜか今夜は、涙を見せずにこうちゃんの話をすることができた。


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