悪魔狩り屋と優しい悪魔
翌日の朝―
「凛童綾芽さーん、生きてる―?」
琴乃が私の腕を指先でつついている。
私、凛童綾芽は自分の席でグロッキーnowです。
理由は簡単です。昨日のことが回りすぎて脳と身体のサイクルが逆回転したからです。
それの所為で今考えていることすら敬語になってしまいますよ。
嫌いで嫌いで嫌い過ぎて存在そのものが消えてほしいほどの奴に助けられたあげくの果てにファーストキスを取られたんです。
今世紀最大級の厄日に匹敵するものはありません。あったとしても私の心情から考えるとそれはKO負けするでしょう。
そんな理由で私は今、琴乃につつかれてもグロッキーから抜け出せません。そんな私のことを知らず、いつも通り女子の黄色い悲鳴が聞こえてきます。
そして、やっぱりあいつは私の元へ来ます。
「おはよ、グロッキー綾芽ちゃん」
瞬間、私の拳が嫌いで嫌いで嫌い過ぎて目の前から消えてほしいほど嫌いな奴の顎に綺麗に飛び込んだ。
「オット…危ないなぁ。朝から元気だね。綾芽ちゃん」
糞安久李さん(今はとてつもなく機嫌が悪いのでそう呼びましょう)が軽々と避けた。
「出会い頭になんてことを言いますかあなたは。確かにグロッキーだったのは認めます。ですがそんなネーミングセンスの欠片もない名前をつけられる理由はありません」
「朝からひどいなぁ」と糞安久李さんは笑う。そして妖笑を浮かべた。
「昨日のお代。まだもらいきれてないつもりなんだけど?今度はキス以上のことをしてあげよっか?」
瞬間、糞安久李さんの顎に私のつま先がヒット。今度は避ける隙も与えなかった。
糞安久李さんが吹っ飛び教室のドアに頭をぶつけて脳しんとうを起こして女子に保健室に運び込まれたのは言うまでもない―