悪魔狩り屋と優しい悪魔
安久李side
「さすがに今回のは痛かったな…」
俺は蹴られた部分を抑えながら、屋上の階段を上った。
朝に凛童ちゃんに蹴られた部分がジンジンと痛む。凛童ちゃんは結構な勢いで蹴ったようだ。
「見た目が可愛いのになんであんなに暴力的かなー…」
本人が聞いたら殴ってきそうな言葉を、俺は呟きながら屋上の扉を開いた。
誰もいない…と思ったら、先客がいた。黒髪ポニーテイルの、朝俺を蹴った張本人が丸まるような体勢で寝息を立てながら眠っていた。
「…寝てるし」
俺は凛童ちゃんの隣に座った。天気が悪い所為か、アスファルトの地面が冷たい。俺は静かに手を伸ばし、凛童ちゃんの髪に触れた。
サラサラの、痛むことを知らなさそうな髪が指先から滑り落ちる。
触れられた事が気持ち良いのか、凛童ちゃんは小さく微笑んだ。
陶磁器のような肌に目を縁取る上向きの睫毛。形のいい眉と、さくらんぼ色の唇。
夜の空みたいな綺麗な髪に、メリハリのある肢体を持つ凛童ちゃんはこの世の者とは思えないほど美しい容姿の持ち主だ。
「…こんな俺じゃなかったら、好きになってくれたかな…」
俺は小さく呟いた。誰も聞いていない、だから呟けたのかもしれない。
俺は凛童ちゃんの唇にそっとキスを落とすと自身の着ていたブレザーを凛童ちゃんの体にかけ、屋上から出た。