悪魔狩り屋と優しい悪魔

「少し我慢してよ」

安久李さんが私の前に座り込み、傷の上に巻いていた布を取り始めた。

抵抗する気力なんて疲弊した私にはもうなかった。悪態すら着けない、「触れるな」と言ってやりたいのに体力が限界なのかもう喋ることすら辛い。

安久李さんが巻いていた布を取りきった。瞬間、

「………っ!?」

安久李さんの唇が、傷口に触れた。傷口が熱を持ち、じんわりとした痛みが走った。振りほどこうとしても、力が入らない。

「じっとしててよ」

「…………っ!?!?!?!?」

振りほどこうとした瞬間、ちゅっという小さな音が聞こえたかと思えば、安久李さんが傷口を吸っていることが分かった。

毒を体内から吸い出すためだとは分かっている。しかし、相手は大っ嫌いな安久李さんで、ましてや一般人だ。

「やめ…ろ……」

「やだ」

ピクリと体が小さく跳ねる。安久李さんは小さく口角を上げ、強く吸った。

「んっ…!」

私は安久李さんの行為にされるがままだった。

どれくらいの時間がたったのだろう、安久李さんは唇を傷口から離し、にやりと、意地の悪い笑みを浮かべた。



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