悪魔狩り屋と優しい悪魔
私は手を強く握り、悪魔たちを静かに見る。
「動かないでくださいね。安久李さん」
嫌いな人でもこの人も人間だ。なら、私にはその人を守る義務がある。
私はホルスターから銃を抜き、ゆっくりと結界に手を伸ばす。
「凛童ちゃん」
名前を呼ばれ、振り向いた。瞬間、安久李さんが私を抱き寄せた。
「ちょっ…安久李さー」
抵抗を試みるも、男女の力の差なのか抜け出すことは出来なかった。
「……絶対戻ってきて」
安久李さんが呟いた言葉に、私は目を丸くするしかなかった。
私はなんとかして手だけを抜き、安久李さんの頭を撫でた。やわらかい髪が指先からこぼれ落ちる。
「愚問です。こんなところでやられるような私ではありません」
私ははっきりと告げ、再び抵抗を試みる。すると、さっきまでのが嘘だったかのように安久李さんはすっと私から離れた。
「……絶対に動かないでくださいね。安久李さん」
たとえ嫌いな相手でも、その人は普通の人間なのだ。
私は銃を握りなおすと、結界に触れビルの外に出た。