悪魔狩り屋と優しい悪魔
「やっと追い付いた…もう逃げられないぞ」
私は息を切らしながら、安久李さんに銃を向けた。
彼は5階建ての廃ビルの3階、小さな部屋の真ん中にいた。ひび割れたリノリウムの上に散らばる、窓ガラスの欠片、剥き出しの断熱材、上の階が見える穴の空いた天井。
彼は自身の金に近い茶色の髪をかきあげ、漆黒の瞳を私に向けた。
ゆっくりと口角をあげ、私に微笑みかける。
「俺を殺すの?凛童ちゃん」
「当たり前だ。私は悪魔を殺さないといけない。たとえ、それが知り合いだったとしてでもだ。」
私は銃口を彼の額に向ける。水を打ったように静まり返った部屋、空調なんてない、蒸し暑いはずの部屋なのに私は寒気がした。