悪魔狩り屋と優しい悪魔


目の前で逃げまとっていた女が、ゆっくりと倒れていった。そのときだけ、時間が止まったように感じた。

女が背中に赤い花を咲かせながら、静かに倒れていった。人間だったものが、死体に、物に、肉の塊にかわる

俺は女だったそれに近づく。死んだか確認しようと、それの首筋に触れようとした…しかし、

「…………あ……」

俺はそのとき、それに近づいたことをすさまじく、後悔した。それがー女が抱き抱えていた子供が、ひどく妹にー自分の目の前で焼け死んだ、やえに似ていたのだ。

無論、その子供も死んでいた。恐らく、弾が貫通していたのだろう。子供の喉には、ぽっかりと黒い穴が開き、そこからとどまることなく赤い血が流れていた。

目を見開いたまま絶命した子供は、俺を淀んだ目で睨み付けていた。

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