先生 〜柚子side〜
かろうじて立ちあがり、ロビーに出る。
やっと涙も収まったのに、外が明るいのとソファーに座ってホッとしたせいか、又涙が出てきた。
何これ……。
恥ずかしいのに、止まんない。
申し訳なさそうにしながら、ヨシヨシと頭をなでてくれる。
それが何だか自然で、心地よかった。
「マジごめん。こんなに嫌いだって知らなかったから……」
「ヒック…うっ…大丈夫」
泣きながら言っても全然説得力無いよね。
「じゃあ、俺のバイト先でスイーツおごるよ」
涙目のまま聡史を見ると、まゆげをへの字にしながら困った顔をしていた。
ひとつ頷くと、少しホッとしたように方をなで下ろす。
「許す」
鼻声でそう言うと、目をまん丸くした後で笑い始めた。
「柚子のこんな姿って、ある意味レアじゃん?」
「ううっ……悔しいけどレアだよ。ってか笑うな!!」
さらに笑う聡史。
人の気も知らないで!!
どんだけ怖かったか……。
「だって、本当に怖かったんだもん」
頬をふくらます私。
そんな私に衝撃の一言。
「ヤベ、マジ可愛いんだけどそれ」
は……はあぁぁぁぁぁ???
な、なに言っちゃってんの?!
「でたっ!!チャラ男。いつもそんな事ばっか言ってんでしょ」
「だから、何でチャラ男なんだよ。俺が、いつチャラチャラしたんだよ」
「……いつも」
「どうせ恰好でそう思ってるんだろ?」
うっ……図星。
実際、カッコイイ方だと思うからモテるだろうしさ。
「マジ、図星かよ……凹むなぁ~」
がっくり肩をおとす聡史。
おあいこじゃん。
そんな凹んだままの聡史に連れられて、バイト先に行く事になった。