追憶 ―混血の伝道師―
こんな事を言ってはいけないが、僕の授業を選択する生徒には変わり者が多い。
彼女を一見した印象では、
読書好きで勤勉家な、
ふんわりとした清楚な女性。
僕の生徒には珍しいタイプだ。
ああ、でも。
少々つり上がった可愛らしい猫目。
少しだけ気は強そうな印象。
「気を悪くしないで下さいね?私もつい先日まではNを選択していたんです。信じられなかった、妖精史なんて。」
「…えぇ、大半の皆さんは同じ反応ですよ。気にしないで下さいね」
ははは、と僕は笑った。
嫌味でも卑屈でもなく、
妖精史は、なかなか世間一般に受け入れて貰えない「狭き門」なのだ。
「でも、この間…出逢ってしまったんです。教室のたまたま座った席に、先生の講義内容のノートが置いてあって…」
「…うん、誰かの忘れ物?」
彼女と長く話すだろうと仮定した僕は、そう聞きながら彼女の横に腰掛けた。
「はい。名前は勿論、ノートの表紙には何も書いてなかったから、悪いとは思いましたけど中身を確認したんです。持ち主探す為に…」
「うん?」
「――もう、釘付けでした!!その回のNの講義、何も覚えてない。ずっと、そのノートにかじりついて集中してしまって…!!」
「…へぇ、どの辺りの内容?」