追憶 ―混血の伝道師―
2・壊れたガス灯と急な帰郷
2・壊れたガス灯と急な帰郷
「……あらら?」
大学の入口まで来ると、
僕はポカンと口を開け、何とも間抜けな声を出した。
『あららー!!』
僕の胸に抱かれたコンもまた、周囲をキョロキョロと見回すと、同じ言葉を並べていた。
大学構内もまた、
広場と同じ様に、沢山のガス灯で明るく保たれているはずだった。
生徒たちが勉学に励む場所だ。
明るくなくては支障が出る。
どうした事か。
これは街路よりも、暗い。
大きなガス灯は1つも灯っていない様子で、小さな灯りだけが幾つも右往左往していた。
『ガス灯、壊れちゃったの!?』
小さな灯りは、構内にいる人それぞれが、個人的に持ち歩いて不便を凌いでいる物だ。
簡易的な短時間しか保たない手持ちのガス灯か、火を灯したランプか…。
それらが、僕たちの視界中でゆらゆら揺れて動いている。
『小さい光がウロウロしてるとさぁ…、追いかけたくなるよねっ!!』
「……そうだね」
コンの言葉を適当に流しながら、この非常時に声を掛けるべき相手を探していた。
広場のガス灯も、街のガス灯もしっかりと灯っていたから、この地区一帯の不具合ではなさそうだ。