追憶 ―混血の伝道師―
「…こりゃ大変。5日で終わるかな…、学園長…」
「うーん、じゃあ1週間…臨時休講にしようか。事務長に言って手配するよ。ほらね、ミハルくんに見て貰って正解じゃないの。ねぇ、コンちゃん」
学園長はこの緊急事態でもやはり呑気にそう決めたけれど、事務長辺りは慌てふためき苛立つだろう。
僕たちはもう慣れたけれど。
「…1週間、休講か…」
本が何冊読めるかな。
ジンくんは大変だろうに、僕はそう不謹慎な事を考えていた。
「ミハルくん、あっちの実家にでも帰ったら?もう随分帰ってないでしょ。」
学園長が相変わらずコンとじゃれ合いながら、僕を見上げて提案していた。
「…んー、そうですね~」
「いいよ?有給休暇つかって」
思い掛けない幸運の言葉に、心が揺れに揺れていた。
「ほら、コンちゃんだってストレス溜まってるみたいだし。見てよ、急にこの態度」
学園長の不服そうな声。
コンは学園長にそっぽを向いて、僕をジッと見上げて尻尾を振っていた。
期待を込めたキラキラの瞳だ。
「……じゃあ」
そうしようかな。
僕の返答を最後まで待たずに、周りが騒ぎ始めていた。
『――わあぁぁい!!やった!!』
「ずりぃ!!俺も…」