追憶 ―混血の伝道師―
――ポォー…!!
そう汽車到着の予告音がホームに鳴り響くと、
僕はコンを慌てて自分の手荷物のカゴに、無理矢理に押し込めた。
『狭いのぉイヤーぁ!!』
「後で出してやるから」
そのやり取りをクスクス笑う呑気な孫娘を、轟音とともに到着した汽車に乗せる。
指定の席につき、
フゥ~と溜め息を漏らして間もなく、
「課外授業って、どこに行くんですか?先生」
そう聞かれて、
僕はポカンと口を開けた。
「……聞いてないの?」
「特別に課外授業を頼んだ、って。先生を信じて、任せておきなさいって…」
………学園長!?
「…あ!!先生に渡す物を預かってます」
彼女から大きな紙袋を受け取ると、中に入っていたのは『両親に宜しく』と言わんばかりの菓子詰めと、1通の封筒。
『ミハル先生へ。何にも知らないから、1から授業してあげて。旅費は僕がもつから。月たちが重なる良い時期だ。セイちゃんに宜しく』
達筆で、
淡々と書かれた文字…
ワン…
『…じいさん、ショッケンランオーね?』
「……職権乱用、ね。…って、いつの間にか出てるし!!」
彼女の膝の上から、
僕の手元を覗き込むコンの姿。