追憶 ―混血の伝道師―


「……え?」

「だからね、コンが頭が良いってゆうのは…まぁ誤解で。どちらかと言えばバカ…?」

『――ぅおぃっ!!』

コンは怒ったけれど、

動物や物も「どうせ人間には言葉が通じない」と諦めていて、だから知らん振りで人間たちの言葉を流して聞いている。

僕たちの言葉は理解している。

伝わる相手には、
ちゃんと意思を示してくれる。

人間よりも、ある意味「大人な対応」で割り切って存在しているのだ。


そう説明を終えると、
彼女は僕の予想以上に興奮していた。


「――じゃあ!!じゃあ、コンちゃんみたいに文章も読めるんですか…!?」

「いいや、流石に。コンは見た目こんなんだけど、実は長生きでね?年季入って僕らと居るから覚えたみたい」

『――えっへん!!』

短い鼻頭をピンと高く上げ、「ワン!!」とタイミング良く鳴いたコンを見て、彼女は瞳を大きく開けて納得してくれたようだった。


「……すごい…」

彼女は素直だ。
興奮で言葉を無くしていた。


大概、人間たちは知らない。

それは、知ろうとしないから。
自らが理解しようと思わない限り、世界は広がらない。


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