追憶 ―混血の伝道師―


そして、
知らない世界を知ろうとする人間だけが、僕の講義に集まる。


「…僕の講義は、世界史Y。君に知らない世界を教えてあげられる。まだまだ序盤にも程遠いけど…?」

「――お願いします!!」


「多分この課外授業で、君は今までの常識では有り得ない事を見るし、知る。その覚悟はありますか?」

「――はいっ!!」


「…課外授業は初めてですよ…。君の名前は?」

長い付き合いの生徒だって、言葉を並べた講義ばかり。
実際に課外授業に連れて行った事はない。
彼らに怒られてしまう。


「あ!!私、ユリです!!すみません、自己紹介もせず!!」

「……ユリ、さん…。じゃあ、目的地への道中も、初めから講義しましょうか。」

「――はい、先生」


ガタン、ガタン。
心地良く揺れる汽車の中、

僕たち2人と1匹だけの、
課外授業が始まった。


「…あ、…あれ!?」

ユリさんは自分の荷物の中をガサガサと漁り、何かを探していた。

「…何?」

「私、昨日読んでいた本の内容で…先生に聞きたい事があったんですけど…」

あぁ、そうだ。

僕は自分の荷物から『深い森』という本を取り出した。

「――あっ」

昨日広場のベンチに忘れた物。

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