追憶 ―混血の伝道師―


「では知っていますか?何故、空には16もの月が在るのか?この世界の中心に在る広い樹海に、何故人間が立ち入れないのか…?」

「その存在は知っています。でも理由は知りません。」


「ユリさんが読んでいた『深い森』にも、そんな疑問が並んでいたでしょう?」

ユリさんが深々と頷いた。


『深い森』

著者が、この世界の疑問をぶつけて自問自答する。
僕がユリさんに質問した内容は、その本に書かれている事を繰り返しただけだ。

この人間社会の外側に隠れた真実を知りたい、謎を解きたい。
そう著者が書き綴り、
『深い森』と題している。


「…最後まで読みましたけど、本には結論が書いていませんでした。」

「うん、僕も昔に読んだ。どう思いました?」

「…新しい考え方でした。月や樹海の存在は知っていたけれど、その事に疑問を持った事はなかったから。」

「うん」

大半の皆が、そう。
そうゆう世の中に誰かがした。


「でも!!そんな時に、先生の講義のノートに出逢っちゃったんです!!迷いの森とか、精霊とか。今まで信じられなかった妖精史が、スッと…!!答えに繋がるんじゃないかと思って!!」

「……正解」

僕はニヤッと笑いかけた。

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