追憶 ―混血の伝道師―
ザワザワ…
『…風たちは世界中を駆け巡るからのぅ。人間世界でのミハルの様子だって、わしの耳には入ってくるんじゃよ…?』
「――そうなんですか!?」
『だから、わしゃ知っとったよ。ミハルが可愛いお嬢さんを連れてるって…。』
じいさんは情報通。
親の目が無いからといって、僕は人間世界でおちおち悪い事は出来やしないのだ…。
ワン…
『――…なぁ』
気が付けば、虫は居ない。
退屈そうなコンが、じいさんの根元でゴロゴロ身をよじっていた。
『――…まだ?俺様、つまらん。腹ペコ。ヒマ。まだ?ヒマヒマー』
「……はいはい」
コンの言葉もまた、
じいさんには風を介して伝わるのだが、
1人ユリさんだけは、相変わらず首を傾げていた。
「…コンが飽きちゃったみたいでね。…待ってなさい?どうせ里にはすぐに着くし、今帰っても夕飯の支度は途中だよ?」
『――ぶぅ』
ザワザワ…
『…ゆっくりしておいき、コン。夕飯の支度が終われば、風たちがわしに伝えてくれるよ…』
『……ぶぅ』
僕の両親に早く会いたいんだろう。
コンは元々、
僕の母さんの相棒で…
「……ぁ。」
僕はある事に気付いた。