追憶 ―混血の伝道師―


「…コン。忘れてた。お前、羽…、伸ばしていいよ…?」

そもそも、
コンの羽を伸ばさせてやろうと、最初の目的はそれだった事を思い出す。
課外授業に気を取られて忘れていた。


『――…いいのかっ!?』
「うん」

『…だってさぁ…』

コンは躊躇して、
ユリさんを見上げていた。

賢くなったなぁ。
「人間社会では秘密にしろ」と約束させた言い付けを、ちゃんと守ってくれている。


「…大丈夫だと思うけど。……じゃあ、説明しながらにしようか?課外授業だしね」

僕はユリさんに向き直る。
もう1つ、早々に講義を始めようとしていた。


「…あのね、ユリさん。コンはね、実は…ただの犬じゃないんだよね?」

「……は?犬、ですよね?」

キョトンとした彼女に、

ワン!!
『――失礼ねっアナタ!!こんなにプリチーな俺様が、ただの犬な訳ないでしょうがっ!!』

そう通訳する僕も大変だ。


「…犬竜…ってゆう種族がね、妖精世界には居るんだよね」

「…いぬりゅう…?」


『犬竜』――

妖精が、
自分の心から産んだ卵。

その卵から孵る生物で、
主人の妖精と心を通わせる。


コンは、
僕の母さんの犬竜。

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