追憶 ―混血の伝道師―


コンは僕の両親にベッタリだったのだけど、僕が人間社会に出る時に、同時に預けられた。

最初は渋っていたけれど、
大好きな母さんに「僕を宜しく」と頼まれたら、コンも断れないのだ。

どっちが「宜しく」してやってるか、分からないけどね。


「…あっちでは秘密にしていてね、コンもただの犬を装ってたんだ。コンの属性は火。口から火を…」

「――…わあ!!」

彼女の叫び声は、
僕の説明を待たずにコンが「フィ…」と火を出したから。


『あら驚かれちゃった。俺様、スゴイでしょ!?』

もぉ…、
と溜め息をつきながら、
僕は彼女に説明を続ける。


属性は犬竜それぞれで、
コンはたまたま火だけれど、
中には水や氷、風や土なんかを属性に持つ犬竜も居る。

姿は…
基本的には、小型犬。


「でも犬竜と言われる所以はね、コウモリみたいな竜の『羽』があって…」

……プルプルプル。

コンは身震いすると、
背中に隠していた「黒い羽」で、パサパサと風をうった。


「…で、飛ぶんだ」

『――そう!!俺様、飛ぶのよ!!スゴイでしょ!?』


「羽を伸ばさせてやろう」とは、僕らにとっては言葉通りだったのだ。

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