追憶 ―混血の伝道師―
ずっと羽を隠していた。
基本的には四足歩行するが、
背中の羽を使ってバランスをとって歩く。
向こうでは、その羽が使えなかった。
従ってコンはよく道端で転んでいたのだ。
それは物凄くストレスのようで、しばらく振りに羽を伸ばせたコンは、騒がしく上機嫌に宙を舞う。
『わぁーい!!まぁーっ、飛べるって最強よねーっ!!』
『俺様パタパタしちゃうーっ』
そんなコンを見て、
流石にユリさんも言葉を失っていた。
「…これも、秘密にしてね」
「はい、お祖父ちゃんと約束したんです。見て来た事は口外禁止…。コンちゃん、嬉しそうですね…」
「そりゃあ、もう…呆れる程に。全部を通訳するには恥ずかしい程に…」
あの呑気な学園長が、
口外禁止を約束していたとは驚いた。
さすが、経験者。
今回はガス灯のトラブルで辞退したが、学園長も僕の祖父の馴染みの客だ。
勿論コンの事も知った上で、あれだけ可愛がってくれている。
「…あ~…私もコンちゃんの言葉が理解出来たら良いのに~…!!」
やはり血筋か…。
学園長と同じ事を言っている。
「基本的には、卵を孵した妖精の主と風たちにしか…」
「でも先生は分かるんでしょ」