追憶 ―混血の伝道師―
「僕はねー…血筋かな。母さんが主だし、不思議な事に何故か人間の父さんもコンの言葉が分かるんだよね~…」
「どうして?ズルイ…」
「なんか絆が強いとか…よく知らないけれど」
その辺りの説明は、
長くなるので僕は逃げた。
人間の父さんは、
何やら前世が狼らしく、動物の言葉が分かるらしい。
そこに母さんの妖精の力が合わさった僕もまた、コンをはじめとする動物の言葉や、更には物体に至るまで気持ちを読み取れる訳だ。
血筋。
嘘はついていない。
『――本当、可哀想よねっ!!俺様のプリチーな言葉の数々が分からないなんてっ!!ねっ!!』
「……ユリさん、分からない方が幸せかもよ。かなり失礼なヤツだからね…」
『――ちょっと!?ミハル!?』
風たちは、
森にコンの言葉を伝える。
全ての会話を理解している風たちと森の木々が、サワサワと楽しそうに周囲を揺らしていた。
――…サァァ…
外からの風が1つ吹くと、
じいさんは僕に時を告げた。
『…そろそろ夕飯の支度も終わるじゃろう。七色の花畑を案内し里に着くには、頃合いじゃろな…』
ワン!!
『――よしっ行こうぜっ』