追憶 ―混血の伝道師―
「…でも、母さんなら出来るかもしれないね。僕の母さんの魔法は、妖精世界でも類を見ない程に強大みたいだから」
「…そうなんですかっ!?」
本当によく表情が変わる。
純粋で素直な子だ…。
やっぱりコンに似てるよ…。
ワンっ!!
『ハルカなら大丈夫だ!だぁーって、この俺様のご主人だし~!!大妖精だし~っ!!』
ルンルン。
そんな擬音が聞こえてきそうな程、コンは上機嫌。
黒い尻尾がパタパタ、
せわしなく動き続ける。
「…そんなに嬉しい?母さんに会えるのが」
『――あったり前でしょっ!?もう俺様、毎日毎日ミハルばっかしでイヤよっ。飽き飽きなんだからっ!!』
「……失礼な犬め」
『――あぁんっ!?この俺様にケンカ売るのかっ!?丸焦げになりたいのかっ!?そうかっ、なりたいんだなっ!?』
「はいはい」
『きぃぃーっ!!ハルカに叱って貰うんだからっ!!ミハルなんて泣いちゃえ、バーカ!!』
こんな会話が繰り広げられているとは、ユリさんには勿論分からず、
「……楽しそう」
不服そうに唇を尖らせていた。
『――楽しくねぇよっ!!ユリ、言葉が通じたら覚えとけよ!!俺様の偉大さをよーく分からせて…』
「…うるさい」
人目を気にせず会話出来る事が嬉しいのか、
コンは普段よりうるさい。
……それは、僕も同じか。