追憶 ―混血の伝道師―
6・七色の花畑と硝子の里
6・七色の花畑と硝子の里
僕たちは、すぐに森を抜けた。
――サァ……
何にも遮られることのない、気持ち良い風が僕たちに吹く。
目の前には柔らかに七色に光輝く、背の低い花畑が一面に広がっていた。
「…すご…い!!」
「……そう?」
木々は緑色の光を放つが、
花たちはそれぞれの持つ花びらの色を微かに放つ。
白く霞んだ湿った空気。
それが一層に、
それぞれの色を混ざり合わせ、幻想的な七色を生む。
花畑には、幾つもの大きな水溜まりがあり、水面は月に照らされて輝きを放つ。
「行くよ、ユリさん。水溜まりには入らないでね?花たちの貴重な蜜だから」
「…蜜?」
花たちに囲まれた中央に、人が1人通れる程の細い道がある。
それをゆっくりと進みながら、僕は彼女に言葉を続けた。
「うん、植物たちの露で出来た水溜まりに、羽虫が花たちの蜜を集めて溶かしてる。妖精世界の『魔法の薬』ってトコかな」
「……わぁ」
「あ、魔法の薬って言っても、怪我や病気にちょっと効く位だからね?」
そんなに大きな夢を持たれても困るから、僕はそう言葉を足した。