追憶 ―混血の伝道師―
何ともばつが悪い。
僕は広場近くの大学で講師を職業としているのだが、どうやら同じ大学の生徒らしい。
確かに学業に励む場所に必要のない犬を連れて歩く様な講師は、生徒たちに好奇な目で見られるだろう。
大学構内で気を付けてはいるが、コンに受け答えしている不気味な風景を目撃されていれば、好奇な目に拍車が掛かる。
更には教授や他の講師陣に年配が多い中で、僕は生徒たちに近い年齢だ。
普段から見た目で軽く扱われる事も多い。
それにも、もう慣れた頃だが。
「…すみません。担当学以外の生徒さんには接点が無いもので…なかなか…」
せめて、なめられる事が少なくなるようにと、落ち着いた態度と言葉遣いに気を遣っている。
彼女の態度は好印象だった。
「いえいえ、生徒は人数も多いですから。でも私、今期から先生の授業をとらせて貰おうと思ってるんです!」
「…そうなんですか、また物好きですね?」
僕の担当は『世界史』だ。
世界史の内容は2種あり、
NとYに分ける事が出来る。
世界史Nは、人間史。
世界史Yは、妖精史になる。
大概の生徒は、Nを選択する。
僕の担当は、Yなのだ。