Forget me not~勿忘草~
「そうれす、平成!知ってますか?」




「…アハハ、未来だもん、知るわけないや、アハハ」



笑いだした私に釣られたように、沖田さんもプッと笑い出す。




「ハハッ、壮大な酔い方ですねぇ!未来かぁ…」

―面白いことを言うなぁ…



酔っ払って、赤い顔をして…「未来から来た」って言ってるのか



こんな女の子、初めてだ…




つい調子に乗って



「ねぇ、◯◯さん、未来はどんなです?」



どうせ待たなければいけないなら、この子の面白い話を聞いているのも悪くない。



手酌で湯呑みにまた酒を満たすと、ヒョイッと取り上げられた。




「あ…っ」




ああぁ…呑んじゃったよ…



コクコクと喉を鳴らして飲み干してしまって…




「沖田さんは、もう飲んじゃらめれす」




「酔っ払って、したくないことしちゃうから、らめ」




そういうと、睨んでるつもりなのか…



上目遣いに僕を見上げる。




呂律(ろれつ)も回らない、舌っ足らずな喋り方…



なのに、僕の事必死で考えてくれるんだね。



(かっわいいなぁ…)




ん…、今…可愛いって…思った?




いやいや、ないない。



土方さんのお気に入りの女の子じゃないか…




プルッとあたまを振って、◯◯さんから湯呑みを取り返す。




「はいはい、もう飲みませんから、◯◯さんも飲んじゃダメ、ね?」




「は~い…」




「よしよし、いい子ですねぇ」



今度は僕が◯◯さんの頭を撫でてあげる。




頭を撫でられて、子供みたいな顔で「えへへ」と笑っているのを見たら



…なんだか変な気持ちになってくる。




(胸が…キュッとする感じ)




…風邪でも引いたかな


「未来はですねぇ…ケータイって言うのがあるんれす」



急に勢い良く話しだした◯◯さんは、



お膳の上の空のお銚子を僕に持たせる。



「もしも~し、って沖田さんがやると」




スッともう一個お銚子を持って、自分の耳にあてて



「は~い、◯◯ですよ~ってすぐに繋がるんれす」




「はい!やってみて。もしも~しって」



ニッコリ笑って、早くやれ、と促されて…



マネをしてお銚子を耳元に持っていく。



「も、もしもし」




「はい、◯◯れす。どなたですか?」



目の前の◯◯さんが、お銚子を耳に当てて応える。





「私は新選組一番組隊長、沖田総司と申します」




…未来って、けっこう面倒くさいな



話すのにも道具が必要なのか…





「…しんせん…ぐみ?」



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