Ghost of lost
「まぁ、少し考えておいて頂戴。あのカオリという霊とは話がついたけど、リサって子がどう思うかは解らないからね。今のあなたはよく眠って疲れを取ること。それを優先して考えてね。その薬、ちゃんと呑むのよ」
 理恵はそれだけをいうと帰って行った。
 部屋の中に残された勇作は考え込んでしまった。点けていたテレビから女性アナウンサーの声が小さく流れている。デジタル時計はもう午前零時を表示しようとしていた。
 そういえば久しぶりの静かな夜だった。いつもなら浮遊霊達の宴で五月蠅かった。けれども、それはもう起こらないだろう。これからは斯うした静かな夜を過ごすことが出来る。勇作の心は落ち着いたものに変わっていった。 いつの間にか外では小雨が降り出した様だった。アスファルトの上に薄く張った水の幕の上を走っていく車の音が部屋の中に忍び込んでくる。久しぶりの穏やかな時間の中で勇作はいつしか深い眠りの中に落ちていった。
< 15 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop