Ghost of lost
　部屋に帰った勇作はリサの怒りが爆発することを覚悟していた。上司の須藤秀美に対してでもあれほどの反応を示したリサであるから、操に対してはそれ以上の反応が予測されたからだ。
　酔いを覚ますために水道の水を飲んでいる間も勇作は背中に神経を集中させていた。リサは何の反応も示さない。振り返ると血の様に真っ赤に光ったリサが佇んでいた。
「リサ…」
　勇作は腫れ物に触る様に声をかける。
　だが、彼女は答えなかった。
「彼女は高校時代の友達でさ、もう八年もあっていなかったんだ」
　勇作の言葉は良い訳じみていた。
「いいわよ、別に…」
　リサは静かに答えた。不気味なほど静かに…。そのせいで部屋の中は冷たい静けさにと富まれていた。
　それが返って不気味だった。
「なあ、リサ…」
「放っておいて…」
　リサの口から予想もしていない言葉が出てきた。これまで勇作とは片時も離れようとはしなかったリサが、今は近づかないで欲しいといっている。それだけ彼女の怒りは強いのだろうか？
　これならば責められて暴れられた方がどれほど良かったことだろうか？何よりも彼女が何を考えているのか見当もつかないことが怖いほどだった。
　リサは鋭い視線で壁の一点を見つめていた。壁の向こう側まで貫き通そうというほど鋭く、痛いほどの視線だった。
　きっと優しい言葉をかければかけるほど、リサの心は傷ついてしまうのだろう。リサの震える身体を見て勇作はそう思った。
　リサは部屋の片隅で小さく蹲ってしまった。ｓぉれでも視線は壁の一点を見つめているままだった。
　勇作は彼女をそっとしておいた方が良いだろうと思い、一人ベッドの中に入った。
　その日からリサの姿が見えなくなった。　
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