Ghost of lost
 操の顔から怒りの表情が消え始めた。それは彼女の中のリサの怒りが静まり始めている証拠だった。だが、安心は出来なかった。操の中のリサが戸惑い始めたのだ。
 勇作の言葉はリサが決めつけていたものとは違っていた。勇作は裏切っては居なかった。今でも自分のことを思ってくれていた。勇作は自分を見捨てることはないのだ。勇作、勇作、勇作…。
 リサの胸の中で勇作の名前が何度も木霊している。憎しみが戸惑いに、戸惑いが信頼に彼女の中で変わっていった。
「信じて、いいの?」
 リサの声は震えていた。
「ああ、君を裏切ったりしない。君の傍に居る」
 勇作はフェンスの向こうに向けて右手を差し出した。リサが操の手を勇作の手に添える。
 三つの手が重なり合った。
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