Ghost of lost
「リサの着ている制服から彼女が通っていた学校を調べてみようと思う」
 我ながら良い考えだ。勇作の顔はそう語っていた。だが、理恵は半信半疑の様だった。
「だけど学校を調べてからどうするつもり?」
「それは今解らない。デモ何もしないよりは良い。リサに一歩近づける」
 勇作の決意は固かった。
「でも私はやはり反対だわ。彼女が忘れたということは余程の事があった筈よ。まして自殺となると…」
「忘れたい出来事が原因で自殺をした」
「多分そうね。それにあなたが調べようとするときリサさんは必ずそばにいるでしょう?」
 確かに理恵の言うとおりだった。リサは勇作のそばを離れようとはしない。まして操との一件があってから片時も離れようとはしない。今回はちょうどカオリ達が来てくれたから一人で出られたのだ。
「一人で動くことができるの?」
 理恵は勇作の目をじっと見つめた。
「無理、だよね…」 
「そう思うなら止めなさい。彼女を苦しめるだけだわ」
「じゃあ何も打つ手はないのかい?」
 勇作の中に怒りが沸き始める。
「あるわよ。でもそれもリサさんには苦しいでしょうね」
 理恵は組んでいた腕をほどき下がってきた前髪をはらった。理恵は何かをためらっていた。それを口にしていいものか躊躇っていた。
「記憶喪失、乖離性健忘っていうんだけど、無理に思い出させない方が良いっていうことは話したわよね。そして今問題になっているのは彼女の境界性人格障害の方よね。これのために彼女は操さんに対してあのような行動に出た。それは間違いないわよね?」
 勇作は頷く。
「あなたはリサさんを普通の人のように変えたいと思っていない?」
「思っているよ。あれは異常な行動だから」
「それはあなたのエゴじゃない?」
 理恵のこの言葉に勇作はムッとした。
「何でエゴなんだよ。あんな風に苦しんでいるなら救ってやりたいと思うのが普通じゃないか」
 勇作の語気が荒くなる。

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