Ghost of lost

「いや、リサがどう思っているか走らないけど、僕は恋愛対象にはみていない…」
「友達ともいえない、知り合いより少し近い存在ということもできるわね。ましてあいては幽霊だし…」
　勇作はリサとのこれまでの関係が正しかったのか、疑問に思い始めた。今までの関係は必要以上に近いものではなかったか。冷静に考えてみるとよくなかったように思えてきた。「要は自分と相手の距離を正しくとるということなのよ。境界例の人は、『見捨てられ不安』から必要以上にあなたとのｐきょりを地締め手くるけれど、それに振り回されてｒはいけないということなのよ」
　理恵はそこまでいうと机の上に置いたマグカップの冷めたコーヒーを一口飲んだ。
「境界例の人のいうことに共感できればそういえばいいし、できなければ『理解しようとしてみたがこの部分がよくわからない』と接することね。そして本人がこの状態を改善したいと思うようにしていくこと。これが大事だと思うわ」
　勇作はこれまでリサが一人でいることができないのをかわいそうだと思い、どこにもついてくることを許していた。だがそれは異常なことだったのだ。近寄りすぎた関係だったのだ。それをこれから改めていかなければならない。リサを『一人の人間』として扱って理科なければならない。
　ここまでべったりとくっついた関係を改めていくのには簡単ではないことを勇作は自覚していた。
「焦らないことよ。境界例の人と接するのは難しいのだから。だけどね」
　理恵はそこまで言うと勇作の肩に手を乗せた。
「私という相談者を持ったことは正解だから…」
　勇作は力なく頷いた。
　これからリサとどう接していけばいいのか、自信がなかった。特にあの豹変ぶりを見せられてからは…。だが見捨てることもできなかった。見捨てたり、見捨てようとしたりしたときのリサの反応が怖かった。
　自分は理恵のいうとおりにできるのだろうか？
　自分の価値観を押しつけず、一定の距離を置き、見捨てられ不安を抱かせずに普通の生活を送る。
　それができるだろうか？
　勇作は結論が見いだせないまま理恵の診療所を出た。
　既に町は夕暮れ時を迎えていた。
　駅は帰宅の人々を吐き出し、人々は家路を急いでいた。そんな中、勇作は道ばたに停めてあったスクーターに乗り、リサの待つ自分の部屋に走り出した。
　そんな彼を物陰から見つめる黒い影があった。