Ghost of lost
 理恵は小一時間ほどいると着替えなどの必要異な物を取りに勇作の部屋に向かった。リサは心配そうな顔をして勇作のそばにいた。意識が戻るまでずっと泣き続けていたのだろう、彼女の目は赤く腫れていた。
「大丈夫だよ。傷はたいしたことはないのだから」
 勇作はリサに微笑みかけた。
「でも、私のせいなんでしょう?」
 リサの声が泣き声に変わっていく。
「泣かなくて良いよ。君のせいじゃないんだから…」
 勇作は泣いているリサを慰めた。
 そのとき、くたびれたグレーの背広を着た男と紺のビジネススーツを着こなした若い女が勇作の9もとを訪れた。二人は胸のポケットから警察手帳を取り出して勇作に名乗った。
 男の方は小島良、女の方は結城恵といった。ともに美しが丘暑の刑事だった。
 彼らは勇作の身に起こったことを事件だと考えていた。その一つに隣人の衣装源があった。この隣人は夜中に人の争うような音を聞いていた。(ただこの隣人は面倒なことに巻き込まれたくないために通報はしなかった)そして勇作の傷の位置だった。謝ってつけたと言うには無理がある位置だった。このため警察は傷害もしくは殺人未遂事件として捜査を始めていた。
 勇作は昨夜の出来事を言える範囲で刑事達に説明した。(勿論、相手が生きていないものではないかということは言わずにいた)
「ところで、誰か¥に恨みを買うような覚えはあるかい??」
 小島は探るように勇作を覗き込んだ。
「いいえ、僕にはありません。ただ『まだ殺さない。お前を苦しめてからだ』というようなことを言ってました」
 勇作の答えを聞いて小島は腕を組み、考え込んだ。その間、恵は何かを警戒するように周囲を見回していた。
「するとまた襲われる可能性があるわけだ…」
 小島に言われて勇作は身震いがした。
「警護を要請しましょう。それまでは十分気をつけるように」
 小島は年を置くように言い残すと恵とともに病室を後にした。

< 41 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop