短編②
「だって、」
彼は優しく微笑み、私を見た。
「死神だもん」
「え…?」
「もういいでしょ?つか、僕が話聞くの疲れてきたよ」
私は、
また捕われてしまうのだろうか…?
「じゃぁ、審判しようか。君が地獄行きか天国行きかの」
"あの人"は私に自由をくれると、
私を解放してくれると、
約束してくれた。
そのかわり、
もう、会わないと約束もした。
「うー…ん…。面倒だから、地獄行きで」
すると、彼の後ろにある扉が開き始めた。
さっきまでは気付かなかったが、扉の近くに生き物がいた。
あれは、"ケルベロス"?
「じゃぁね。もう会うことはないから」
ケルベロスが私の方に近付いて来る。
私は思う。
今まで体験していた鮮やかな色をした絶望と、
今から体験する真っ黒な絶望。
どちらの方が残酷なのだろうか?
助けてなんて、もう言わない。
でも、
私が楽しめるような真っ黒な絶望であって欲しいと、
私は願う。